U、宇宙の出来事

 U-1、 1987A物語



     1987年2月23日に400年ぶりに私たちの天の川銀河の隣にあるマゼラン星雲で超新星
    の出現が確認されました。
    超新星とは、新しく星が生まれることではなく、逆に太陽のような恒星が死期を迎え、最後に
    大爆発することをいいます。夜空に突然何の前触れもなく星が明るく輝きを増すため、新たに
    星が生まれたように見えるのです。
    私たちの太陽もあと数十億年経つと衰え、赤色巨星となって同じ運命を辿ることが分っています。
    今回のこの天体ショーは、数々の幸運に恵まれ、天文学や物理学に多大な発見をもたらし、
    歴史的な出来事となりました。
    その幸運とは、偶然に爆発前の写真を撮っていたことや、2ヶ月前に太陽ニュートリノを観測する
    日本の施設<カミオカンデ>が稼動を始め、幸運にも超新星ニュートリノが観測されたことです。
    偶然が偶然を呼び、どのようなことが分ったのか、まとめてみました。




  
1、時と位置:

    時: 1987年2月23日 午後4時35分35秒 

    位置: 16万光年離れた大マゼラン星雲のサンド−リアク星
           大きさは、太陽の80倍、質量は、約15倍の巨星
          (1光年とは、光が1年かけて進む距離を示す。16万光年とは、
         16万年前に出た光が今、届いたことになります。)



  
2、現  象:   400年ぶりの超新星の出現(急に明るさを増す新星)



                  
                                               
画像/NASA
                <新星とは、名ばかり、実態は、星の死そのものです>




  
3、登場人物:

    @第一発見者: 南米チリのラス・ジャンパナス天文台の助手
               <イアン・シェルトン>

    A爆発前の写真を偶然撮った人:  オ−ストラリア「サイディング・スプリング」天文台 
               <ロブ・マクノ−ト>




  
4、今回明らかになったこと:

    @紫外線探査衛星 IUE の観測結果:

    ・予測を超えた非常に強い紫外線を出していた。
    ・赤色巨星 ⇒ 青色巨星 ⇒ 超新星爆発 
                     ・・・予測と違った星の形態が確認された。


    AX線探査衛星 「ぎんが」 の観測結果:

    ・いつX線が観測されるかによって、爆発の際の星の内部構造が分る。
     そして、予想よりも半年早くの7月にX線が捕えられた。

    ・このことは、理論と違って、星の内部で大規模な攪拌が起きていたことを物語っていた。


    B気球によるガンマ−(γ)線観測結果:

    ・ガンマ−線は、原子核が崩壊するときに発生し、超新星内部の反応の様子を伝えてくれる。
     ニッケル56 ⇒ コバルト56 ⇒ 鉄56 へ崩壊を繰返す過程に放出されるγ線を検出。

    ・観測結果から、原子核融合の理論通りの反応が確認された。



    C赤外線観測天文台「カイパ−」の観測結果:

    ・赤外線は、超新星の分厚いガスの層を通り抜けて内部の元素の情報を伝えてくれる。

     4月・・・水素ガスの輝線
     11月・・・ニッケル・コバルトの輝線
     更に ・・・Fe, Cl, Mg, O, Ar, S, Si
     次々に重い元素の輝線が見つかった。

    ・これは、超新星爆発の際に次々に重い元素が作られたことを意味した。
     このように超新星の爆発は、新たな物質を生み出し宇宙空間に撒き散らす役割を果たしている。
     今回その確かな証拠を得ることができた。

    ・私達の体を作っている重い元素、例えば血液中のヘモグロビンは、鉄イオンを含み
     赤く色ついている。この鉄分は、はるか遠くの恒星の爆発によって作られ、それが
     巡りめぐって私達の生命体に取り込まれたものです。

     私達生命体は、このように広大な宇宙と直接結びついた存在なのです。



    D神岡鉱山の「カミオカンデ」によるニュ−トリノの観測:

     ・ニュ−トリノとは何か?

      電気的に中性な超微細粒子で宇宙で数の多い基本粒子と云われています。
      太陽から放出されているニュ−トリノは、私たちの体の中を毎秒10兆個、昼も夜も通り抜けて
      いますが、私たちは、何も感じない。
      私たちの体を構成している元素は、実は、下の図に示すようにスカスカの構造になっていて、
      ニュ−トリノが余りに小さい粒子であるため、内部を自由に通り抜けてしまうのです。


     水素原子を例にとり、原子核を1m大の大きさに引き伸
     ばすと、電子は、100km先を周回していることになりま
     す。

     拡大してみると原子の中身が空洞であることが良く分る
     と思います。

                 
 

    ・カミオカンデは、岐阜県の神岡鉱山跡に作られたニュ−トリノの観測所です。
     地下1000mに3000tonの純水を溜め、プ−ルの内側に1000個の光電子増倍管を張り
     巡らせた装置です。
     何をするのかと云えば、純水中を通過するニュ−トリノが水の原子と衝突した際に僅かに
     発光する光<チェレンコフ光>を捕らえるのです。
     光の強さや量のデーターからニュ−トリノの性質を解析します。

    ・当初は、原子核の中にある陽子の崩壊を計測する目的で作られた施設だったのですが、
     目的を果たせず、急遽、太陽ニュ−トリノを観測する施設に改造されたものです。
     そして、1986年の暮れに改造が終了し、観測を再開して、僅か2ヶ月後の1987年2月に
     大事件が起きました。350年ぶりの超新星の出現です。

    ・恒星が燃え尽きて寿命に至ると重力崩壊を起こし、超新星爆発の直前にそのエネルギ−
     の99%がニュ−トリノに持ち去られ、残りの1%が衝撃波となって、星を内部から爆発
     させます。そして、爆発後に高温高密度の中性子星ができると考えられています。
     しかし、過去に観測されたことがなく、理論通りに進むのかよく分っていなかったのです。

    ・今回の予期せぬ事態に、カミオカンデの光センサーは、世界で始めて超新星ニュ−トリノを
     しっかり捕捉し、貴重なデーターを記録していました。
     1987年2月23日午後4時35分35秒に11個のニュ−トリノの痕跡が確認されました。
     (アメリカでは5個確認された)

    ・その観測結果から、爆発のエネルギ−量が計算されました。
     そのエネルギ−量は、2.5×1053エルグ。
     太陽が今まで放出した全エネルギ−量の500倍に相当することが分かりました。
     爆発のエネルギー量が、理論値に近いことから、超新星理論の正しさが証明されました。

     世界中が注目した数百年ぶりの超新星の爆発にカミオカンデは、素晴らしい成果を生んだ
     のです。小柴先生がノーベル賞を受けた訳が理解できたでしょうか?
     そして、1000mの地底で宇宙の先端情報を探るニュートリノ天文学が誕生したのでした。

    ・1987年2月23日午後4時35分35秒のこのときに、はるか16万光年の宇宙空間を旅
     してきた光とニュ−トリノが地球に到達しました。ニュ−トリノは、南半球から北半球へ地球
     を貫通して再び宇宙へ旅立って行きました。その時間は、たったの11秒!


                   

                   <ス−パ−カミオカンデの内部>

      後継機ス−パ−カミオカンデでは、1万1000本の光電子増倍管(浜松ホトニクス製)
      が並ぶ。
      光電子増倍管は、直径50cmの電球のお化けで、テレビのブラウン管と逆の働きをする
      ものです。微かな光を増幅して電気信号に変換します。今や世界各地のニュ−トリノ観測所
      で日本製の光センサーが使われています。




                      
                          爆発20年後の1987A    
画像/NASA


    超新星爆発は、恒星の死であると同時に新たな物質の創造の場であったことが良く理解
    できたと思います。
    私たちの身の回りにある物質は、全て恒星の爆発と深く結びついており、宇宙との結び付き
    を示すものです。


    参考 ⇒ Astro Arts

    




 
U-2、 オリオン座ベテルギウス星



     
                                                     画像/NASA

    上の写真の左下の赤い星がオリオン座を構成するベテルギウス星です。
    私たちの太陽系から640光年離れていて、その大きさは太陽の1000倍、木星の軌道並みの
    大きさです。
    この星は、脈動する変光星として、知られていましたが、最近の観測結果から、この星の脈動は、
    大きなコブによるもので、極めて活発なガスの対流が起きていることが、分りました。(下の図参照)
    そして、近々、寿命が尽き超新星爆発することも分りました。

             
          <表面が凸凹しているBetelgeuse> 画像/NASA    
          <3方向にガスが噴出している>  画像/NASA


    1987Aのように遠くの星ならば、問題ないのですが、640光年は、かなり近い距離ですので、
    地球に与える影響が心配されています。
    4億4千万年前の三葉虫の絶滅は、超新星爆発のγ線バーストによると考えられています。
    γ線バーストは、星の自転軸上に噴射されることが分かっていますので、ベテルギウス星の
    自転軸の向きが、調べられました。その結果、地球に対して、20°角度がズレていて、深刻な
    影響が出ないことが分りました。

    星が超新星爆発する直前にそのエネルギーの99%がニュートリノに持ち去られますので、日本の
    岐阜県神岡鉱山の地下にあるニュートリノ観測所<スーパーカミオカンデ>が今、最も注目されて
    います。
    スーパーカミオカンでは、爆発直前のベテルギウス星からニュートリノを補足し、世界中の天文台へ
    速報を流す責務を負っています。
    もしも、ベテルギウス星からのニュートリノの補足に成功すると、人類は、初めて星が爆発する様子を
    ライブで、観察することができると期待されています。
    カミオカンデでは、今、24Hr/日の監視体制を敷き、世紀の天体ショーを待ち構えています。

    爆発がいつ起きるかは、誰にも分りませんが、いつ起きても不思議ではない。
    ネット上では、2012年に起きるという情報が流れ、騒動となっています。




     






 
U-3, 「はやぶさ」が明かしたイトカワの素顔


  
<イトカワの素顔>


   何故<はやぶさ>はイトカワを狙ったのでしょうか?
   米ソの探査機は、土星の衛星や金星など目立つターゲットが多い中で、日本の<はやぶさ>は、
   目立たない地味でちっぽけなな微惑星なのでしょうか?
   川口プロジェクトマネージャーが最近執筆した「はやぶさの超技術」の書物を読むと
   アッケラカンと「サンプルリターンの技術実証が主目的なので、対象はどこでもよかった」と書かれ
   ています。一瞬、拍子砕けしそうな理由ですが、要するに往復に必要なエネルギーの少ない惑星
   であれば、つまり、打上げ日時から狙える最短距離の小惑星であればどこでも良かったということです。
   事実、対象は、ネレウス⇒1989ML⇒1998SF36(イトカワ)へと3回もターゲットを変えています。
   しかし、そのような大雑把に決められたターゲットですが、「はやぶさ」が持ち帰ってきたサンプルや
   惑星の観測データーが示す事実は、当初の目的以上の重大な発見を世界にもたらしました。
   
   その内容を調べると次のような重要なメッセージを読み解くことができる。

   火星と木星の間には、小惑星帯が存在し、何十万という小惑星が太陽の周りを回っています。
   それらの小惑星は、至近距離でひしめき合っていますので、互いにぶつかり、中に弾き飛ばされて
   軌道を大きく外れたものも出てきます。
   この玉突き事故を起こした天体が内側の惑星の軌道に入り、惑星と衝突事故を起こすことが
   あります。
   6500年前には、メキシコユカタン半島に直径10kmの巨大隕石が落下して、恐竜の絶滅を引き
   起こしました。イトカワは、将にその弾き飛ばされた隕石になり得るもので、いつ何時軌道を変えて、
   地球に向かってこないとも限らないのです。
   イトカワの公転軌道を見て下さい。地球とニアミスする可能性があることが良く分ると思います。
   3年に一度地球に接近し、遠くに離れたときは、探査機に通信する場合、往復40分時間がかかります。

            

              S:太陽  E:地球  I:イトカワ  M:火星


   処が、そういった微小惑星の実態は、まるっきし分っていませんでした。
   米ソを初めとするどの国も未だかって調べたことがなかったのです。
   地球に衝突するかも知れない重大な微惑星であるにも係らず・・・です。

   技術実証衛星「はやぶさ」は、初めてS型惑星のベールを剥ぎ、素顔を明らかにしました。
   下の写真のラッコ型の岩塊に世界はビックリしました。
   大きさは、たったの600mほど。重量3500万ton、どこにもクレーターなど見当たりません。
   これまで見てきたどの惑星とも姿・形が違います。
   イトカワは、人類が見た最も小さい天体で、それでいて、最もありふれた天体でもありました。
   詳しく観測した結果、この惑星は、ガレキの寄せ集めで内部に40%もスキマを持つ
   Rubble Piles Planet ラブルパイル天体であることが、初めて確認されたのです。
   30年前に存在が仮想されていた天体が実在したのです。
   そして、この惑星は、46億年前に太陽が誕生してから後の760万年後に、
   20kmの大きさの母天体が衝突によりバラバラに破壊され、集積して出来たことも
   分りました。



              
                宇宙に浮かぶラッコ「1998SF36ことイトカワ」       
写真提供JAXA


   地球に落下する隕石の大部分は、普通コンドライドと呼ばれている石質隕石です。。
   その源は、小惑星帯の内側を回るS型小惑星と考えられていましたが、そのS型小惑星
   の成分を示すスペクトルを調べると、普通コンドライドのスペクトルと一致しないことが
   知られていました。
   隕石の発生源と考えられているのに成分が一致しない理由が今まで分りませんでした。

   処が、今回の「はやぶさ」によるイトカワのサンプルの分析の結果、
   イトカワのようなS型小惑星の表面は、宇宙風化によって本来のスペクトル型が変化している
   ことが初めて明らかになったのです。
   (宇宙風化は、主に太陽風などによって起きると考えられています。)

   このようにして、地球に降り注ぐ隕石は、イトカワのようなS型小惑星が源であることが初めて
   突き止められたのでした。

   地球に持ち帰ってきたイトカワのサンプルは、0.1mmの大きさ(下の写真)しかありませんが、
   <カンラン石> <斜長石> <輝石> <硫化鉄> <クロム鉄鉱> <燐酸塩> 
   <鉄ニッケル合金>
   等の鉱物が特定されています。





            
                  <イトカワの微粒子>   写真提供JAXA



   まだまだ分析が続けられている処ですが、
   今回の成果は、将来、衝突しそうな微惑星を発見したとき、その対策に貴重なデーターをもたらした
   ことは、間違いないことでしょう。







  探査機「はやぶさ」
  
不死鳥「はやぶさ」物語



          
                                                 写真提供JAXA



   小惑星探査機「はやぶさ」は、2003年5月9日、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から
   打上げられました。
   そして、2010年6月13日に、60億キロ7年の長旅を終え、この地球に辿り着き、次の後継機
   へのたまご(卵)となるカプセルを分離して燃え尽きました。

   ・・・・はやぶさは、小惑星のかけらと引き換えに、自らは燃え尽きたのでした。


   満身創痍になりながら幾多の困難を乗り越え地球に辿り着いた姿は、多くの感動を私たちに
   届けてくれました。
   何が私たちを感動させたのか?
   それは、全身疵だらけにながら、何度も死線を乗り越えて不死鳥のように甦ったことです。
   そして、最後まで務めを果たした後、力尽き、花と散った最後が私たち日本人の琴線に触れた
   のではないでしょうか?

   「はやぶさ」が成し遂げた科学的成果は、

   ・サンプルリターンを成功させ、太陽系誕生の謎や惑星形成過程などを解き明かす手がかりを
    得たこと。
   ・小惑星に着陸し、初めてその実態を明らかにした。そして、小惑星の衝突防止に役立つ情報
    を入手したこと。
   ・
探査機が小惑星に着陸した後、地球に帰還に成功したこと自体がすでに人類史上初の快挙。


   ・・・など
   幾つもあげられますが、何を指し置いても私たち日本人に示してくれたことは、

   「どうような困難に怠っても、決してあきらめない」

   という強い信念を持つことの大切さを教えてくれたことでした。

   「はやぶさ」チームが成し遂げた成果は、将に国民栄誉賞に値するものです。


      
          <地球に辿り着き花と散るハヤブサ>
          <右下の光点が「はやぶさ」から切り離されたカプセル>

   しかし、華やかな成果に目を奪われがちですが、ここに至った経緯を決して私たちは、見逃しては
   なりません。

   1998年7月4日に火星探査機「のぞみ」が打上げられました。しかし、この探査機も数々のトラブル
   に遭い機能回復が果たせず、最終的に火星への衝突回避処置(2003年12月9日)を取った結果、
   火星探査機「のぞみ」は、永久に太陽の周りを回る人工惑星となったのです。

   この失敗・挫折の上に「はやぶさ」は、築かれているということです。地道な研究の積み重ねが、
   今日の成功に結びついていることを見逃してはならないのです。
   そして、私たちが気をつけなければならないことは、「結果が全て」の風潮にしないことです。
   「結果が全て」の風潮は、企業でも、科学の世界でも本物の業績に結びつかないからです。

   「はやぶさ」の成功の前に「のぞみ」が遺したものを是非、紐解いてほしいと思います。
   ⇒惑星探査機「のぞみ」が遺したもの




   そのような時に、関係者からプロジェクトの運用の詳細の報告が出版され、今更ながら、当時の運用
   の凄まじい格闘の様子が分るようになりました。ここに、改めて、まとめてみました。


  <運用ロケット>

     
           MV-5 ロケット 写真提供JAXA                        写真提供JAXA

   惑星探査機MUSES-C、こと「はやぶさ」は、MV-5という固体燃料ロケットで
   2003年5月9日に鹿児島県の内之浦から打ち上げられました。
   このロケットは、遠軌道に探査機を正確に打上げるために、機体をカスタマイズして最適化
   したものです。総重量140 tonの機体で1.8 tonの衛星を打上げることが出来ます。
   日本が世界に誇る高効率(燃費の良い)のロケットなのですが、高コストであるという
   理由から、2006年9月の打上げを最後に廃止されてしまいました。

   この固体燃料ロケットの開発と製造が廃止された背景には、液体燃料ロケットを管轄
   している旧科学技術庁との主導権争いがあったようですが、表向きの理由と別に、高性能な
   ロケットであるが故に他国からの地政学的な干渉・誘導もあったようです。
   <嫉妬と恨みのマネージメント 糸川・隼からイトカワ・はやぶさへ

   日本の優れた技術は、度々、其の国の世界戦略の邪魔になるようで、その都度、巧妙な
   手口で攻撃を受け、撤退させられてきた。
   例えば、自動車・デジタルカメラ・携帯電話・家電のマイコン制御に使われている日本製のソフト
   TRONなども餌食になりました。
   <Windowsは風と共に去る日が来るか。

   無料公開されているパソコンソフトTRONの志の高さに較べて、マイクロソフト社のパソコンソフト
   「Windows」は、内容を公開せず、周辺ソフトも抱き合わせで売りつけるなど、悪どい商売で富の独占
   を図っている。其の国が世界から嫌われる所以である。

   少し脱線しましたが、日本の優れた個体燃料ロケットも政治的に葬られてしまったようです。
   最近、お金持ちになった別の大国なども・・・さぞや大喜びしたことでしょう。
   バカを見たのは、井の中の蛙ばかりなり、、、でしょうか。

   薄汚い政治の話は、これ位にして、
   夫々のロケットの開発の歴史を少し振り返ってみたいと思います。
   先ず、固体燃料ロケットを開発してきた母体は、東大の宇宙航空研究所。
   故糸川英夫教授が戦後にペンシルロケットから開発を始めたことで知られています。
   ロケットの使用目的は、科学観測を目的とした科学衛星を打上げることです。
   世界で4番目に人工衛星の打上げにも成功した純国産技術です。
   そして、製造は、旧中島飛行機の技術者を擁した名門・旧プリンス自動車鰍ゥら日産
   自動車鰍経て、更に、IHIエアロスペース社へと移管されてきました。

   一方の液体燃料ロケットの開発母体は、旧科学技術庁所属の宇宙開発事業団。
   東大主体の科学衛星と目的を異とする通信・放送・気象の実用大型衛星を打上げるために
   当初は、アメリカから技術導入して開発が進められてきたものです。
   アメリカから導入した技術は、一部ブラックボックス化しており内容が分らないようになって
   いる。
   製造は、三菱重工竃シ古屋製作所。
   開発を進めてきた液体燃料ロケットは、液体酸素と液体水素を燃料として使う地上最強の
   化学反応を利用した液酸-液水系ロケットと呼ばれるものです。
   この取り扱いの難しいロケットは、地球の低軌道へ大型衛星を打上げるために特化したもので
   科学衛星打上げ用には、適していないようです。


         
            <LE-7 & LE-5A エンジン>  写真提供JAXA


   本来、目的が異なる衛星であるため、夫々に適したロケットで打上げるのが最適なのですが、
   2001年12月に文部省と科学技術省が統合されて、文部科学省となった折に、2系統の
   ロケット開発母体が整理統合されて、JAXAとなり、ロケットの開発も1系統に統一されて
   しまったようです。
   しかし、日本が独自に開発してきた固体燃料ロケットは、貴重な純国産技術である。
   他国の干渉に屈することなく開発を復活させ、独立国家としての気概を示すべきである。


   ・・・と書いたばかりでしたが、最近になって、固体燃料ロケットの開発が再スタートしている
   ことを知りました。
   改めて、JAXAの広報を調べると、2006年 7月にMV-5ロケットの運用は、終了したが、
   「今後の固体ロケットシステム技術の維持を図り、小型衛星打上げへの機動性を確保することを
   目的として、低コストで高信頼性を有した次期固体ロケットの研究に着手したい。」とあります。
   そして、2011年 1月12日に次期新型個体燃料ロケットの開発が再スタートを切ったようです。
   新型ロケットの名前は、イプシロンロケットと云います。
   イプシロンロケットは高性能と低コストの両立を目指す新時代の固体燃料ロケットで、ロケットの
   知能化による自立航法と、モバイルパソコンによる管制システムのコンパクト化も目指している
   ようです。打上げは、2013年を目途に開発が進められている。
   MV-5が運用停止して6年になり、人材の流出など一部弊害もあるようですが、再スタートを
   切ったことは、誠に悦ばしい限りである。



  <イオンエンジン>

   イオンエンジンは、静止衛星の軌道制御用電気推進としてアメリカで実用化されて
   いました。惑星探査機の推進は化学推進が使われるのが一般的ですが、我が「ハヤブサ」
   は、510kgという重量制限があり、化学推進を使う余裕がありませんでした。
   そこで、宇宙航空研究所とNECで探査機用に軽量のイオンエンジンが新たに開発されました。
   イオンエンジンは、燃費が良い代りに推力が小さいという欠点を持っています。開発された
   マイクロ波放電型イオンエンジンμ10は、推力は、8mN(マイクロニュートン)で、
   1台当り僅か0.816gr、4台合わせても3.2grの推力しかありません。
   鼻息程度の推力ですが、宇宙では全く摩擦抵抗がありませんので、塵も積もれば何とか
   で・・・ドンドン加速がついて、驚くべきことに60億キロもの距離の飛行が可能となった
   のです。
   そして、7年間もの長期運用に耐える素晴らしい実績を残しました。
   しかし、その運用は順風満風という訳ではありませんでした。


        
            <イオンエンジンで推進中のハヤブサ>    写真提供JAXA
                
           <マイクロ波放電型イオンエンジンμ10>   写真提供JAXA



  <リア・アクションホイール>

   リア・アクションホイールとは、探査機の向きを制御するための回転するコマです。
   構造は、下図に示す通り、コイルと磁石で構成されたモーターで、真空中で
   1,000〜5,100 rpm回転します。
   メーカーは、アメリカのイサコ・スペース・システムズ社で、「はやぶさ」には、
   X-Y-Zの各3軸に使われていました。
   冗長性なし(バックアップ機能なし)の設計であったため、早々に故障して、Z軸だけに
   なってしまい、その後の探査機の姿勢制御に苦しむことになりました。
   以前、宇宙開発事業団が静止衛星を打上げたときに、アメリカ製のアポジモーター
   の故障で静止軌道投入に失敗したことが度々ありましたが、その事例の再来です。
   彼らは故障しても情報を開示せず、結局事業団は、泣き寝入りせざる得なかった
   悪夢を思い出させるものです。
   日本には、十分対応できる技術力を持った部品メーカーが沢山あるのに、何故、開発
   依頼しなかったのか残念でならない。
   肝心要の機械要素は、絶対信頼できる国産のメカを採用すべきであると思います。
   アメリカのメーカーは、原因究明や対策に協力しないことを肝に命じるべきである。


        




 
 <絶対絶命の窮地>

   「はやぶさ」は、幾度となく窮地に惰り不死鳥のように詠み返ってきました。
   数ある窮地のなかでも特に肝を潰した事態は、次の2点に尽きるのではないでしょうか?

   <行方不明になる>

   「はやぶさ」はイトカワに3回バウンドして不時着しました。その不時着の衝撃で、化学
   推進スラスターから燃料のヒドラジンが漏れ出してしまいました。
   イトカワから離脱した後、キリモミ状態の回転を起し、2005年12月9日午後1時10分
   に「はやぶさ」との交信は、途絶しました。
   3億キロ彼方で「はやぶさ」を消失してしまったのです。
   しかし、通信は、途絶しても「はやぶさ」は、最終Z軸回りに回転が収束するよう
   設計されていましたので、「はやぶさ」のいる方向へひたすら起動コマンドを送り続けた
   のです。一瞬でも地球方向に「はやぶさ」のアンテナが向いたときに通信が繋がる
   可能性があったからです。しかし、通信できる周波数が温度で変化するため、想定
   される全ての周波数で呼びかけなければならなかった。
   気の遠くなるような作業が続けられました。
   この粘りは、2003年12月の火星探査機「のぞみ」の失敗からくる経験が生かされて
   いました。(挫折を乗り越えなければ次がないからです。)
   そして、信じられないことに2006年1月23日に「はやぶさ」から応答があったのです。
   46日目に奇跡が起こったのです。
   姿勢を立て直すためにあらゆる手立てが検討されました。
   1基だけ残ったZ軸リア・アクションホイールとイオンエンジン中和器のキセノンガス
   噴射で姿勢を立て直し、更に太陽光圧を姿勢制御に世界で初めて利用しました。
   このようにして、「はやぶさ」は奇跡の復活を成し遂げたのです。

   そして「はやぶさ」は、地球に向かって帰還を始めました。


   <イオンエンジンの寿命が尽きる>

   2009年11月4日、ついに最後まで動いていたイオンエンジン‘D‘の寿命が尽きました。
   2003年に旅立って6年目に力尽きたのです。エンジン無くして地球帰還は難しいことです。
   もはや万策尽きたかに見えましたが、秘策が残っていました。何と夫々のエンジンの
   生きているユニットを繋ぎ変えて、2台を1台のエンジンに仕立て直したのです。
   このような隠し球は、事前の準備なしに出来るものではありません。
   エンジン開発チームは、もしものときにバックアップ回線を仕組んでおいたのです。
   宇宙では何が起きるか分らない、そのために準備しておいたのです。

   例えば、宇宙空間で可動部分の金属面を接触させておくと固着して動かなくなったり、
   また高電圧を使う機器を起動させるとき、探査機内外の表面に吸着されている空気
   や水蒸気が宇宙空間に拡散しきるまでスイッチを入れることが出来ないのです。
   それは、機器の表面に希薄な気体が充満した状態のときに放電が起き、ショートして
   しまうからです。
   この放電や固着が宇宙空間で探査機の致命的な故障に繋がるのです。

   宇宙では、起きてから手立てを考えても、遠く離れた場所では手の施し様がないのです。
   故に、すべての想定されるトラブルへの事前準備が必要となるのです。
   この事前準備が功を奏し、「はやぶさ」は地球に帰還することが出来たのです。
   将に値千金の気配りです






  
     Music by Steve Raiman <the silver feather>
     参考文献: NHK 「銀河宇宙オデッセイ」、 日経サイエンス「ニュートリノで輝く宇宙」
              宝島社 「はやぶさの軌跡」   講談社 「小惑星探査機はやぶさの超技術」
    ※ 画像/NASA・・・ の記述のある画像の著作権はNASAに帰属します。